wake

晩春の生暖い風が、オドロオドロと、火照ほてった頬に感ぜられる、蒸し暑い日の午後であった。
用事があって通ったのか、散歩のみちすがらであったのか、それさえぼんやりとして思い出せぬけれど、私は、ある場末の、見る限り何処までも何処までも、真直に続いている、広いっぽい大通りを歩いていた。
洗いざらした単衣物ひとえものの様に白茶けた商家が、黙って軒のきを並べていた。三尺のショーウインドウに、埃でよごれた遊具がおいてあり、碁盤の様に仕切った薄っぺらな木箱の中に、赤や黄や白や茶色などの、魚の遊具を入れたのが、店一杯に並んでいたり、狭い薄暗い家中うちじゅうが、天井からどこから、不自然に傷の無い瓶で充満していたり、そして、それらの殺風景な家々の間に挟まって、細い格子戸の奥にすすけた御神燈の下った椅子が、そんなに両方から押しつけちゃ厭いやだわという恰好をして、がちゃんがちゃんと猥褻わいせつな硬い音ねを洩もらしていたりした。

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白昼夢